17. Aug. 2007 (Fri)

デジャヴ[★★★★☆]

デジャヴをDVDで見ましたよ。デンゼル・ワシントン主演の刑事ミステリー、の皮をかぶったなにか。お勧め度は俺としては4にしたいところ。[ASIN: B000PTYQZ6]

さあ困ったぞ。これはまたネタバレ厳禁すぎる。

▼概要
ハリケーンの傷跡も生々しいニューオリンズの街。ダグ(デンゼル)はATF(FBIの同類)の捜査官として事件を追うのだが、ある被害者の周辺に不自然な点が多すぎる。調べれば調べるほどつじつまが合わなくなる事態。一方事件は画期的なハイテク装備を携えた極秘の捜査チームにダグが編入されることで思いもよらぬ進展を見せるのだが…。

▼誉
なかなかこれは考えオチ。意外と頭使って組み立ててます。伏線みっちり。

▼貶
まあいろいろ突っ込みたいところはあるけど、それはきっと野暮ってものなんだろうなあ。この際すぱっと無視すべきなんだが。それでも無視できないところはあるわけで。それすなわち、ここまでやったんなら伏線をあますところなく回収してくれということ。詳しくは追記部分に

▼まとめ
観客を次々とナニソレ方向にひきずり回す豪腕トンデモ映画かと思いきや、結構繊細に詰めてあったりもして意外と楽しめる。映画のストーリーの謎とかをこねくり回して楽しむのが好きな人向け。

さて、以下はネタバレ。もうバレバレに書いてあるのでまず映画を見て、四日後に読んでくれたまえ。


(…ここから後半)

一応文字色も変えておこう。

この手の映画は全力で考察せずにはおれないのがSF者の性といういうやつだが、前提条件として映画の内容を全肯定しておきたいと思う。関係者の証言はすべて真実で、映像として出てきたものも全部そのまま受け入れる。それでもかなりのところまでつじつまを合わせることができそうだ。


何より重要なのは「過去に干渉して歴史が変われば、時間の流れは分岐して、干渉元の世界はいずれ消滅する」という証言。
これはつまり、歴史は事実上改変可能でありながら、タイムパラドックスが生じないというなかなか面白い設定だ。パラドックスを回避するために歴史の分岐を用いるタイムトラベル物は数多いが、そういうのは「歴史改変してもこっちの世界はそのままだしなあ」的な一種の徒労感が伴うのだがこの設定はそれを無理矢理回避しているのが画期的ではないか。改変元の歴史でどんな不幸があろうとも、別にいいじゃんなくなっちゃうし!てなもんだ。まあ世界を丸ごとひとつ消滅させているすげえ大虐殺という解釈も可能だが気にしたら負け。

さて、この世界観のもとでは、歴史の改竄があったとしても改竄された側は直接そのことを知ることはできない。そこんとこは不自然な出来事から推測するしかないだろう。

推測に入る前に、時間の流れに名前をつけておこう。映画の冒頭からの時間の流れを歴史1とする。途中、ダグがマシンを使って干渉することによって生じた新たな時間の流れを歴史2、もし歴史2から過去に干渉してさらに時間の流れを作るのであればそれを歴史3、以下4、5、6…と数字を増やしていくことにしよう。使わないけど。

では犯人の行動を追ってみよう。ノートラブルでテロが成功する場合、犯人はどういう予定だったかというと

自分の車に爆弾設置

船に自分の車を乗せる

バイクで橋から高見の見物

クレアから中古車を買う

とまあこんな感じ。ところが歴史1での実際の犯人の行動はこんな感じだ。
刑事ラリーに車を傷つけられる(かわりの車が必要に)

ラリーを拉致って焼殺

車といっしょにクレアを拉致

クレアの車に爆弾設置

廃屋でクレアにガソリンをかけて以下略

クレアの車を船に載せる

バイクで高見の見物

逮捕

尋問
もちろんガソリンでちょっと焼いたぐらいでは死体は消滅しないので、それは始末しなくてはいけないのだがそれはともかく。

ラリーが登場するのは例のメモが存在するから。つまりこの世界は既に改変を受けている。言われてみればもっと直接的な証拠もあるですね。クレアの部屋のダグによる遺留品や、廃屋に突っ込んでる救急車など。

歴史1は既に未来からの改変を受けていました。干渉してきたひとつ前の歴史を命名規則に従って歴史0としよう。

ここで重要なのは、マシンの描写によると歴史0から歴史2に直接干渉することはできないだろうということ。−1以前の歴史から歴史1への干渉も同じ。だから、歴史1を形づくるために救急車に乗って廃屋に突っ込んだダグがいるとすれば、それはダグ0でしかありえない。ダグ−1やダグ−2が歴史1に来ているということは基本的にないわけだ(歴史0を経由してやってくることは可能だが考えなくてもよさそう)。まあいずれにせよ未来からやってくるダグは一人だけってことですな。

この「現在の歴史は既に干渉されている」という発想はタイムトラベルの直前ダグによって語られるんだが、ここ字幕の訳がなっちくてよろしくない。「これは二度目?」
英語は「What if I already have?」となっていて、「二度目だとしたらどうだ?」ぐらいの意味かと。単なる問いかけではなく、説得のニュアンスが入っているのがポイント。タイムトラベルの実行を渋る科学者が急に前向きになるのはこれを受けてのことだから、こっちのほうが話の筋が通るです。この言葉で既にタイムトラベルの成功例があるんだという確信に到るわけだ。

では歴史2における事件当日のできごとを時系列で列挙してみよう

8:30 ダグ1、救急車を奪って疾走
そのころ、犯人2はクレア2にガソリンかけまくり。
直後、ダグ1、救急車で廃屋に突撃。
直後、廃屋爆発、犯人2クレアの車で出発。
直後、ダグ1、クレア2とともにクレア自宅へ移動。遺留品残しまくり。
9:45 クレア2、ATFに電話
10:10 クレアの自宅を出発
10:50 フェリー出航

遺留品を考えると、歴史1でも、ダグ0が救急車で突撃してからクレアの自宅に移動するまでの流れはこれ以外にはちょっと考えにくいです。犯人1視点では、爆死させたつもりが尋問に出てきた刑事ダグはぴんぴんしてたので、くそう主人公補正のタフガイめぐらいには思っていたようではあるな。そんで一緒に焼死したと思っていたクレアが実際どうなったかは本気でわかっていなかったものと思われる(尋問でもダグのほうが知ってるはずとしか答えていない)。まあ死体が発見されたらまずいですから確認しにいくぐらいのことはしてるかもで、だとすると脱出したことまでは既に把握していたのではなかろうか。

余談。ワニに食われている死体はダグ0ではないことがこの流れからもわかる。わざわざ食われに戻るのは変だし、直接ばらした死体が尋問にきたら、いくら凶悪犯オースタッドでもすこしは気にするでしょ。あれは普通にラリーでいいと思われる。腕白いし。

さて、ダグがわざわざ歴史を改変するだけの動機は何かと言えば要するに惚れたクレアが死んでたからだから、ダグ0の世界でもクレア0は死んでなくちゃいかん。クレアが死ぬのはラリーが車を傷つけたのが原因だから、何者かがラリー0にメモを送っただろうてことになるね。たぶんダグ−1あたりの仕業かと。メモを送らなければ、テロはともかくラリーとクレアは無事だったんじゃなかろうか。余計なことをしたもんだ。

まとめると、映画の前半の歴史は既に未来からきたダグ0によって改変された歴史1で、主人公のダグ1は新たな歴史2でダグ0の行動を上書きしているということになる。ダグ1は結局船を助けて爆死するけど、ダグ0はテロを防げず冒頭の死体袋のどれかに納まっていたかもしないね。そういえば携帯電話の呼び出し音をダグ1が気にする描写がありました(ダグ0もタイムマシンに携帯電話は持ち込まなかったと思われるが、ラリーの携帯電話ならば入手の可能性がある。)

で、ダグ1が爆散した歴史2にはダグ2がいるわけで、クレア2と二人でラストシーンとあいなるわけです。

OKOK。これで伏線は回収されてつじつまが合いましたよ。


嘘です。解決されてねえよ!
なにより疑問なのは歴史1の当日朝におけるクレア1の動向。

9:45 クレア1、ATFに電話
10:42 クレア1の遺体が発見される
10:50 フェリー出航

この3つの時刻は確定事項。ほかにもクレアの部屋の遺留品やクレアが赤い服に着替えていたことから、ダグ0がクレア1を助け出して自宅に連れ帰っていたと考えるほかない。
しかしながら、このあとクレアに犯人オースタッドが関わっていたとも考えにくい。それでなくても大仕事で忙しいのに、わずか1時間でクレアを発見し、ダグ0と戦い、切りそびれた指をちょんぱし、目立たない場所でこんがり焼き殺し、上流から川に流さねばならない。それになにより、オースタッド1の証言からそんな大冒険があったとは読みとれない。

まああれだ。一人だけそれが可能な人物がいるのだが。あれだ。ダグ0。動機がまったくないけどな!

あとクレアの車のカーラジオがつけっぱなしだったのとか、当日朝のラジオで停電の話をしていたのもなにげに意味不明だと思います。受信先でも電気を食うのだろーか?

_ Posted by AoVA at 2007年08月17日 23:55 _ [an error occurred while processing this directive]
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