02. Apr. 2006 (Sun)

CASSHERN[★☆☆☆☆]

ついにこの映画に手を出してしまった。ていうかHDDレコの容量が限界で見るか焼くかの二択。別に焼けばいいじゃんとも思うもののまあ見てから判断しろとかなんとか…。紀里谷和明監督、2004年。[ASIN: B0001A7D0O]

もう今さらなので本気でネタバラシをしながら書きますよ。おすすめ度1。

▼前提
タツノコプロのテレビシリーズアニメーションの傑作、「新造人間キャシャーン」を大幅に換骨奪胎してビジュアル重視で撮影されたSFアクション映画。監督は「宇多田ヒカルの夫」…名前なんだっけ?まあそんなかんじで。

アニメーションのキャシャーンがどんな話だったかは以前第一話を見直したとき書いた文章で確認していただきたい。かなり歪んでるが。


(…ここから後半)

▼概要
軍事国家亜細亜連邦は度重なる戦争と環境汚染に疲弊していた。軍は東博士の「新造細胞」研究に活路を見出す。それは「第七管区の少数民族」がもつという「新造細胞」の驚異的な生命力を利用した臓器量産による画期的な医療技術だ。軍はそれによって兵力の増強を、東博士は病気の妻の延命を目論んでいた。

一方恋人の上月ルナとバイクで疾走する東博士の息子鉄也は「この戦争が終わったら、結婚しよう!」とかいきなり死亡フラグ立てた挙句、戦争に行って民間人を殺戮する任務の最中あっさり死んじゃいます。

そのころ東博士の新造細胞計画は遅々として進まず困ったなあとか言ってたら空からなんかすごい雷だか柱だかがずばーんと落ちてきて培養液の中の人体部品が勝手にくっついて新造人間が誕生。ゾンビみたいにうぁーうぁー言いながら出てくるので二度びっくり。鎮圧部隊が掃討するのですが結局数体が逃亡して、これが後のアンドロ軍団になります。このときガンガン非常ベルが鳴ってるのにポケーっとしてるルナの知能が危ぶまれます。

とりあえず新造細胞の培養液の効果を確信した東博士は息子の遺体をじゃぼっとぶち込み、鉄也もまた待つ事5秒で新造人間として生まれ変わってしまいました。このとき周囲をふらふらしてた鉄也の幽霊はいやんばかんと拒否していましたが生き返ってしまったものは仕方ありません。上月博士のプロテクトスーツを与えられ、なんとか一命を取り留めましたです。

一方行きがけの駄賃に鉄也の母ミドリを拉致して帝都を脱出した新造人間たちは、病気で死にかけのミドリをかついで極寒の冬山を越えたり なんかして遺棄された謎の城に到達します。城には戦闘ロボット軍団が山ほど眠っており、電源入れただけで世界征服のお膳立てが整いました。誰だよそんなの放置したの

このとき新造人間は4人おりまして、それまでドロドロしたビジュアルでうぁーうぉーと唸るだけだったので絵的にもサウンド的にも非常にウザかったのですがブライキングボス(に相等する人)がここで突如リーダーシップを発揮します。具体的には顔を洗ってスッキリしたところで演説を一席ぶつのです。

ブライ「我々は生きている!我々はまぎれもなく ここに生きている!」
おお、君ら喋れたんか
ブライ「しかし、人間はそれを認めようとはしなかった。そればかりか、目にもあまる残虐な手段を尽くして、われら同胞の命を排除した。」
しかもなんか難しい言い回し知ってるのな。じゃぼっと培養液から出てきたばかりにしてはインテリです
ブライ「命に優劣があろうか。生きるという切実なる思いに優劣などあろうか。ただひとつの生を謳歌する命の重みに優劣などあろうか。あるはずがない。」
しかもなんかヒューマニティーとか語ってます。これはヤバイです。

どうヤバイかというと、この世界の人間は博士も将軍もエージェントもどいつもこいつも全員、単調で間を取りすぎてる上に要点の不明なめちゃめちゃ眠い棒読みでしか演説ができません。ところがブライキングボス氏の演説は流暢な上熱意もこもっており、論点もわかりやすく圧倒的に説得力がある感じです。彼のこの類稀なる才能により、新造人間同士のリーダーをめぐっての内輪もめは無事回避されました。
あ、演説の結論は「人間皆殺し」だそうです。

さて、気合も入ったところでロボット軍団を繰り出して侵略です。パンチ力とかジャンプ力とか超すごいとはいえ、新造人間たちは4人しかいないんで実質ロボット軍団だけで戦争やってるみたいなもん ですが、なぜか軍部は新造人間のことばかり気にしてロボットはどうでもいいみたいです ね。そんなだから歩兵を無駄にすり減らすような作戦しか立てられないんじゃ…。まあいいや。

とりあえず上月亭は襲撃され、新造細胞とスーツで超人と化した鉄也君に返り討ちにあったりします。とはいえ屋敷(と例のヘルメット)は破壊され、逃げる途中で今度はロボット軍団の行列にでくわします。なんか変な奴がいるってんで火炎放射の洗礼を受ける鉄也とルナ。しかし、スーツの防御力はその程度屁でもないらしく、見事炎の中から立ち上がる鉄也はロボット軍団を文字通り粉砕。このときヘルメットをつけていない鉄也の頭がチリチリになってないのはまあいいとして、生身で転がってたルナも無事でした

その後鉄也はブライキングボスと一騎打ちを演じていつの間にか負けていました。負けついでにコダマの森みたいなところでいだきあってかなり堂々巡り感のある問答を繰り広げる鉄也とルナですが、唐突にルナがばったり倒れます。タタリ神のしわざでしょうか。都合よく通りかかった近所の遺跡に住む医者の応急処置を受け、なんとか一命を取り留めます。そしたら遺跡の集落に亜細亜連邦軍による襲撃が。虐殺イクナイと思った鉄也はとりあえず邪魔してみたりとか。そしたらそこに新造人間の1人が侵攻してきて軍隊とかどうでもよくなります。とりあえず伝説の救世主にあやかって「キャシャーン」と名乗ってみたりとか。

ところが一騎打ちしてたらルナが軍にさらわれたり。あと都合よく遺跡の門が閉まって一騎打ちの相手を閉じ込められましたよ。なんと中からは新造人間の力をもってしても開かないのです。でも外からはあっさり開きました。自動で。ま、義理もあるので一騎打ちを継続して、結果両者相打ちに。いや死んでないぶんキャシャーンの勝ちですが、あらゆる衝撃から守ってくれるスーツも刀はあっさり刺さるらしく虫の息です。

一方新造人間のなかにもまともに喋れない奴が一体いまして、こいつは脱出の時ルナが逃亡に手を貸したのでルナのファンなわけですが、これが一緒に軍にさらわれてなんかでかい列車で帝都へ連行されてゆきました。が、途中軍の科学者に発見され、もみあいになった挙句殺されそうになります。新造人間なのに学者に力負け。まあそれは回避され、帝都の実験施設に運び込まれます。

ちょうどそのころ遺跡で死にかけてるキャシャーンのところに冒頭のなんかよくわからない雷かなんかがずばーんと落ちまして、瓦礫といっしょに帝都の空からばらばら降ってきます。えー?
これはつまり、「新造細胞を持つ少数民族が住む第七管区の遺跡」の地下に帝都があって天井が抜けたということでしょうか。そんな近所だったのかよ!

まあ役者がそろいまして、キャシャーンとルナはブライキングボスの城にあっさり連行されます。よく考えたらもう他に味方の新造人間がいないので人外同士和解しようという魂胆らしいですね。昏睡状態の母ミドリを見せられたキャシャーンは激昂し、ブライキングボスとのどつきあいが始まりますがこれがいけなかった。鉄也が一言怒鳴ると、ブライはその5倍ぐらい難しい言葉を使って10倍ぐらい言い返します。掛け算すると50倍です。どう考えても口では勝てません。しかも殴りあいでもいつのまにか負けました

さて、軍隊の反撃で城に戦力がわーっと来るので、ブライキングボスも最終兵器巨大歩行戦車を発進させ、ぷちぷちと踏み潰します。ものすごくわかりやすいところにイカニモな時限装置がついているので、こりゃいかんと止めに走るキャシャーン。一方ボスは乗り込んできた将軍にある衝撃の「真実」を告げられて放心したところを鉄砲でうたれて死んじゃいます。衝撃っていっても見てる人全員がまず最初にそれを確認しようよって思うようなアレなんですけどね。下手に弁が立つ分、検証がおろそかになってしまったようです。

一方キャシャーンは時限装置をとめることが出来ず、爆心地で核爆発に巻き込まれますが、よくわからないバリアーで助かった模様。目の前で核爆発が起きた城の中も無事ではすみませんでしたが、ルナは核の直撃を受けても無事でした

で、ここで東博士がでてきて母ミドリを連れ帰ろうとします。まあ新造細胞の技術で生き返らせるつもりだったんでしょう。だがそのことで鉄也と言い争いになり、業を煮やした博士は拳銃でルナの脳天をぶちまけます

博士「すぐに生き返る」
おそらくルナも新造細胞で生き返らせるつもりなのでしょう。どうでもいいけど新造細胞で生き返ったら新造人間になっちゃうんだけどいいんですか東博士。

で、結局キャシャーン以外全員死んじゃってどうするのかと思ったら唐突にルナが生き返りました。これ以上ないってぐらいにグダグダになったところで宇多田ヒカルのキャッチーなテーマソングが流れ、強引にまとめます

とまあ、そんなお話でした。ってだいたい全部書いちゃったんだがいいのか。

▼誉
気合の入った造型なんかはさすがにデザイナー出身の監督だけあるといいたいところです。とはいえ印象をディティールで稼ぐ事にとらわれて、無駄な造型(でかい顔がついてる飛行機とか)多すぎ。

あと換骨奪胎とはいえ「人間と非人間の悲哀」とか「ルーツを欠いた被造物の嘆き」とかそういう要素は残ってるわけでそれはいいんじゃないかと。

あと宇多田の歌のウヤムヤ能力はすごいね!おかげでだいぶ救われてる。

▼貶
まずアニメのキャシャーンから考えればその醍醐味は「キック・アタック・電光パンチ」による圧倒的な破壊力による肉弾戦の爽快感と、「お前は死ぬのではない、壊されるだけだからな」「なにっ」に代表される人間でなくなること、それを人々に理解されない事による悲哀にあるわけで。あとフレンダー。

しかし前者の爽快感は尻切れトンボの戦闘シーンと基本的に負けてるか相打ちの戦闘結果により大幅にスポイル。

後者の悲哀はないでもないんだけど、問題はあくまで「世のため人のためやってるのに社会に受け入れられない」ことにあるべきなわけでそのへん映画では自問自答で勝手に自己完結しちゃってるか、あるいは「出自」ではなく「行為」によって受け入れられてないわけで。別の話になってしまう。

フレンダーいないし!

▼貶2
じゃあ映画単体としてみるとどうかというと、まずシナリオがかなり破綻してる。究極的には「不思議な新造細胞の力」「不思議な雷柱の力」「謎の要塞」でだいたい説明が付くというか、そこまで許容すると何でもアリになってしまう(たとえば「ルナが妙に不死身なのは新造細胞の液をちょっと浴びたからだ」とか「雷柱が落ちるとテレポートするのだ」とか)。そりゃまずいよ。

アクションシーンは前述のとおり、尻切れトンボで基本的に負けてるので爽快感とか無理。ていうかキャシャーンがほんとに主人公なのかも怪しい。

映像的にも色調を統一しすぎてみづらいシーンが多すぎるし、デザイナー出身にありがちだがとにかく空白恐怖症かと思うぐらいディティール過多の詰め込み魔人で、緩急に欠ける。これは編集面でもそうで、カメラがあっちに行ったりこっちに行ったりして落ち着かないし役者の立ち位置はバンバン入れ替わる。アクションシーンは超こまぎれでなにがどうなってるのかわからない。なにかというとフラッシュバックを死ぬほど多用してうざい。しかもそこで使われる映像素材がめちゃめちゃ観念的な上に毎回同じで使いまわしのしすぎ。集中線は笑っちゃうからやめてくれ。
あと、おっさんがあうあう言ってるシーンが多くて不快感を煽りすぎ。いや女性陣もほけらーっとしてるかあうあう言ってるかが大半なのだが。

しかも多くの重要なシーンが尻切れトンボで何を言いたいのかわからない。特にラストシーンなんかは意味不明の極地といっていい。お芸術映画じゃなくてエンターテイメントなんだからそのへんわかりやすくしようよ。ただし軍隊イクナイ(「殺すのイクナイ」ではない!)というのは例外でここだけ妙にわかりやすいので、本筋からは余り重要ではないと思われるその部分だけ妙に強調されてどっちが本筋なんだか。

▼まとめ
この調子で2時間はつらかった。眠いよ。カットする前は4時間とか言うからそれはどうかと思った。そんでこれ以上ひどいデビルマンってどんなのだ。
正直2時間かけて見る価値はないです。「キャシャーン」というタイトルバリューの無駄遣いでもあるし、おすすめ度1。

▼ていうか
あの世界に「キャシャーンという救世主がかつていた」「どう見ても『(アニメの)アンドロ軍団』のロボットと城が存在する」という点から考えると、ひょっとするとTVアニメのほうのキャシャーンの500年後の世界とかかもしれないね。アンドロ軍団との戦いの反省からロボット技術を封印した世界とかそういうアレ。つまりあの城は(アニメの)東博士が作ったもので全部(アニメの)東博士の仕込みとかそういう。

_ Posted by AoVA at 2006年04月02日 23:55 _ [an error occurred while processing this directive]
[ひとこと]

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