15. Feb. 2006 (Wed)

ミュンヘン[★★★☆☆]

現代映画界における最大の技巧と最高の表現力を駆使して崇高なオブラートに包んだ嫌がらせを提供し続けるスピルバーグの話題作。ミュンヘンを見てきましたよ。一応事件そのものは実話ベースってことになってます。

以下ネタバレ


(…ここから後半)

▼概要
1972年のミュンヘン・オリンピック。もちろんパレスチナとイスラエルは深刻な対立をみせており、。パレスチナ過激派はイスラエルの選手団を人質に政治声明を発表。ドイツ警察の不手際、イスラエルの強硬姿勢、イタリア選手団の余計なお世話などがもたらした不幸な結末。いわゆるミュンヘン・オリンピック事件が発生した。

本気で怒ったイスラエル政府はパレスチナ要人の暗殺指令を1人の凡庸なイスラエル人、アヴナーに命じた。『国』と『家族』を天秤にかけ、危険で困難な任務へと踏み込むアヴナー。素人所帯ながらもチームを従え、順調に1人、1人と任務を遂行していく。

だが、彼は気付いてしまった。猟犬もまたなにものかの獲物であることに。

▼誉
スピーディーで有無を言わせぬ導入や効果的なフラッシュバック。陰鬱な光線設計など、スピルバーグならではの玄人テクニックが光ります。最高にこじれきったパレスチナ問題をテーマにして、多少なりとも両者の言い分を絵に出そうという意欲的なスタンスも認めるべきでしょう。
電話のシーンのハラハラ感なんかはさすがの構成といえますな。
すわ銃撃戦という段になって双方機関銃をがちゃがちゃやりはじめる素人臭さがまたいいですね。

▼貶
あんまり後味の良くない映画です。何しろこじれきった政治問題はちっとも解決しない(それどころか悪化する)し、修羅の道の先にハッピーエンドってわけにもいかないし、主人公サイドの倫理基準なんて平和な現代日本人から見れば狂気でしかないし。両方の言い分を描くといっても、あくまでも主人公視点だから、「苦悩する正義の俺たち」とぶっちゃけ同類のはずのPLOがなんだか狂信者にしか見えないし。
おまけに随所でスピルバーグ得意の嫌がらせっぽい組み立てが点滅してるし。あのベッドシーンなんかはどういう嫌がらせなんだ一体。

▼まとめ
アラブとイスラエル、どちらもやってることは大差ないのに我々は一方の視点に肩入れしてしまう。そんなこの映画の描写は、この気違いじみた戦いの中での『正義』の確からしさに疑問を抱かせるに充分だ。となれば、我々の信じる「テロ」と「自由」との戦いの関係、その確からしさにもまた還元できるのではないか。とかなんとか、そういった疑念というか不安を感じずにはおれないあたりがこの映画最大の嫌がらせかもしれない。だからこそのニューヨークなわけで。

スパイアクションものから爽快感を大幅に削って、その分陰謀どろどろ固めで登場人物を追い込む構成となります。そんなわけでエンターテイメントとしてはちと落ちる。テーマが複雑な政治問題の割りにそつなくこなしたという意味では加点できますが、そういうのは基本的に後味が悪いわけで。
しかし、話題性はありますし映画としての品質は高いのでちと加点してもいいか。そんなわけでおすすめ度は3。

しかしなんで映画のスパイのひとたちはヤバイとわかってるのに変装とかしませんかね。

追記。シトロエンの高級車はおしりがセクシーだ

_ Posted by AoVA at 2006年2月15日 23:55 _ [an error occurred while processing this directive]
[ひとこと]

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